最近、懇意になった青年と動物園へ行きました。
小さな山の頂(いただ)きにあるこの古い動物園へ辿り着くには、その途中にある公園を迂回して行かなければなりません。 そんなわけで、急な勾配に息を切らしたこちらが、目の前にあるベンチへ腰掛けると、 「少し話そうか」 とさりげなく、その青年にも腰掛けるよう促してみます。 さて、寡黙な青年に二三の質問を投げ掛けると、その応えを聞くなり途切れた会話。 とはいえ、気まずい空気は、互いの上に感じられません。 暮れ方の公園にどよもす喚声。 近くに学校があるようです。 その声の方へ青年が歩き出したので、これに従い、学校のグラウンドを走る少年たちを見下ろしていたら、 ポツ、、、ポツ、、、 と何かが落ちる音がしました。 降り出した雨のように落ちてきたのは、樒(しきみ)の花で、その巨木の下で、青年とふたり、しばし、追想のときを過ごしていたようです。 「中学生のとき、同級生に告白されてから、そいつとは、高校生になるまでつき合ってたんだけど、あとは、それっきり、、、そっちは?」 と青年がいえば、 「動物園、閉まっちゃったかもね」 と何の脈絡もなくこれに応えてみます。 だって、好きだった同級生が、死んでしまったとは、いくらなんでも、こんなベタなシチュエーションじゃ、いえないよね。 ところで、青年のどこか抹香臭い風貌から、この“樒(しきみ)の花”の特性を思い出したのは確か。 案の定、閉まっていた動物園を尻目に、横浜の町が一望出来る場所へ青年を案内すると、暮れ方の景色を見下ろしながら、亡くなった同級生のことを考え、ついで、青年の口から彼の両親が亡くなったと聞かされたとき、 ポツ、、、ポツ、、、 と降り出した雨が、頬を濡らすのを感じました。 *画像、上、或日の動物園、中、樒の花、下、或日の眺め。
by viola-mania
| 2009-07-12 14:45
| 少年
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いい匂いのするペエジ
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