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禁欲。

あすは、持ち帰り仕事の納品。
それにしても、月曜の夕刻から始めたその作業が、これほどまでに自らの生活をストイックなものにしようとは、、、
ある意味、それは、個人誌『薔薇窗』入稿前準備に、比肩するほど。
そんなわけで、これも個人誌『薔薇窗』の版下原稿を封にいれ、その発送を待つように、このたびの物件のそれを小包にしたものを沓脱ぎに立て掛けると、いまごろになって晴れてきたおもてへ出ました。
例年どおりひらいた、インド浜木綿の艶姿を、ケータイ・カメラでパチリ。
このところ、寝しなに読んでいる、ユッキーこと三島由紀夫の『禁色 第二部 秘楽』より、


 美といふものは本来最も独創から遠いものである……


といった一文が引きたくなりました。
なるほど、この植物は、きわめて自然に、その青春の一時期を謳歌しているかのように見えます。
とはいえ、そんな観念的な思索を凌駕できるのは、習慣といった怪物をおいて、ほかにないのです。
と、このストイックな四日間を振り返って、ふと、そんなことを考えました。
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さて、その二日目。
持ち帰り仕事だとて、その始業・終業時間は決まっています。
そんなわけで、いつもなら6時45分にとっている朝食を、9時45分に終えると、10時より作業開始。
正午に一時間の昼食、三時に30分の休憩をとると、六時までラストスパート。
きょうのノルマを終え、胸・脚、両用のクッションを脚からはずすと、頭にあてがい、しばし、夕寝。
夕食までのわずかな時間、疲弊した脳を休めるとしましょう。
あしたは、この物件の難所を越えなければなりません。
それにしても、夕風が心地よい。。。


 夕づつもあはあはひかりそめにけりあしたは越ゆべき峠のほとり   賢治
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さて、その三日目。
この物件の難所にはいるや、にわかに停滞したペースに、その雲行きも怪しくなりました。
「終わるんだろうか!?」
と、、、
いつしか聞こえなくなった雨音に、窓の向こうを仰いでみると、萌黄に染まった森が、その陽に明るい。
名前も知らない鳥のさえずりに、紛れて聞こえるケータイの着信音。
出てみると、この物件の担当くんでした。
「かくかくしかじか、もう一日オッケーです!!」
晴天の霹靂、否、霹靂の晴天とはこのこと!?
自由になったこころのままに畳みの上へ寝転び、『泣菫随筆』の続きを読んでいるうち、睡魔に襲われうたた寝。
窓の向こうを仰いでみると、鉄色に染まった森が、落ちた陽に暗い。


 雨やめどかへつて空は重りして青木も陰の見え初めにけり   賢治
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*画像、上、インド浜木綿の艶姿、中、もぞもぞ、下、鉄色に染まった森。
by viola-mania | 2009-07-05 19:09 | 雑感


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