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鏡国。

CDショップで、あれこれ、あてどもなく物色していたら、棚から飛び出た柱のひととぶつかりそうになりました。
“柱のひと”とは、よくよく見れば自分であり、、、
つまり、鏡貼りの柱に映った自分と、思わぬ場所でご対面というわけです。


 オクスフォードの彼の部屋は、彼と少女たちにとって、いわば鏡の向こうがわの「鏡
 の家」であった。

                        高橋康也「鏡の家の少女友だち」


“彼”というのは、二つのアリスの物語の作者である、ルイス・キャロルのことであり、或いは、この場合、CDショップで見かけた少年を、棚から飛び出た柱の向こうに追い駆ける、自分であるのかもしれません。
“柱のひと”とぶつかりそうになった瞬間、その傍らには、ソバカスならぬ、赤いニキビを浮ばせた、ひとりの少年があらわれました。
CDを選ぶ振りをして、その少年に近づくと、鏡のなかにあった、少年の、こちらを窺う、好奇の眼差しに出逢いました。
少年と鏡越しに、しばらくの追い駆けっこを続けたのち、鏡のなかからあらわれた少年は、ニキビで赤らんだ端正な顔を振り向け、無抵抗な眼差しでこちらを一瞥。
むしろ、少年のように頬を赤く染め、その少年の傍らを足早に通り過ぎた、自分の方が、少年アリスだったのかもしれません。
鏡国。_d0004250_14493855.jpg

by viola-mania | 2007-03-04 14:50


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