風渉。

長らく冷房のきいた部屋にいたせいか、暑いという意識にからだが反応しません。
長袖シャツをじかにまとったカラダ、そして、顔にも、汗をかいていないのです。
短いスパンで電車を乗り継ぎ、我が家についたところで、ドッと出る汗。
エコロジストを気取っているわけではないけれど、ここ数年、家では冷房を使わないようにしています。
さいわい我が家は、風の通り道にあるらしく、緑陰を透かしてよい風が抜けてゆくのです。


 内地でストレンジャーの意識に目覚めた詩人は、自分が「月の民」ではなく、「天幕
 の民」の後裔であることをいやおうなく自覚させられる。「天幕の民」は「月の民」
 と違って一定の土地に根をおろすことなく、地上を移動しながら暮らしており、それ
 ゆえ、不動の秩序を保つ「天」を地上の個々の場所よりもつねに身近に感じて生きて
 いる。彼らの行く先々で目前の風景は刻々、千変万化する。だがそれにひきかえ、頭
 上の星空は少しも変わらず不滅の美しさに輝いている。


文芸評論家、堀切直人さんの『飛行少年の系譜』をひらいたら、こんなことが記されていました。
確かに、彼らノマド(遊動民)は土地から相対的に分離独立した自らを強く意識しているかもしれないけれど、“不動の秩序を保つ「天」”のもとにあるかぎりは、誰の上にも、星は“不滅の美しさに輝いている”のです。
この風を心地よく感じる意識がある以上は、、、


 北方の洞窟で誕生した夜、産舎の上に鷲座(アクエラ)が南中してゐた。
                                吉田一穂「夏」
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by viola-mania | 2008-08-03 05:12 | 雑感


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